09-02

09-02
「間宮さん、ほんとすみません、こんな急に休日出勤お願いしてしまって…。」
岸谷はすごく申し訳なさそうな顔と声で言った。それが都にはちょっと可笑しくて笑ってしまった。
「ううん、大丈夫だよ。」
都は、岸谷のサポートで現場作業員であれば、行く気は満々だった。昨日実家へは帰ったから、今週末は実家へは帰らないつもりでいた。土曜は部屋の掃除が終わったら、散歩がてら40分ほど歩けば着くことのできる大きなショッピングモールで買い物をして、日曜は1日ごろごろしていよう、と計画していたが、誰かと約束をしているわけでもなく、その日に絶対やらなければいけない用事もない。だから対応するのは可能だった。ただ、お客の温度が高いところへ行かなければいけないので、それなりに緊張を強いられそうだ。お出かけふんふふんふふん、と言うわけにはいかない。
「ちなみに、なんであたしになったのかな?」
マネージャーグループも違うので、急に土日の現場作業員の業務が、都に回ってくるのは少し変だと思った。急なのだし、OJT的な意味合いもあるのであれば、高松課長のところの社員が行ったって良かったはずだ。
「あ、それは、新垣さんがー、岸谷ちゃん、誰が良い?って聞いてきてー、あたし即答で間宮さん、って答えちゃいました。」
岸谷は何か自慢するような調子で言うので、都は笑ってしまった。
「新垣さんかー。あいつめー。」
都の悪態に岸谷は笑っていた。新垣は役職としてはマネージャーではなく、その一つ下の役職者だが、個別の案件を担当しておらず、マネージャー的な役割を担っている。トラブルが多かったり、お客や営業、他部署の要求が多いような案件のPMをサポートしているのは都にも見えた。都は最初、そのいかつい風貌から怖い人だと言う印象を持っていたのだが、冗談が好きで、とても面倒見の良い人だと年々わかって来た。今回も、温度が高くなっているお客の本社へ、現場作業員としてだが、新入社員を行かせるので、本人が安心できるよう、同行する人間を岸谷に選ばせてみようと言う、彼なりの気の回し方なのかもしれない。
場所や時間を聞いたが、都が知らない地名だった。9時スタートということなので、8時45分に客宅の最寄駅で営業と待ち合わせということになっているらしい。駅名も聞いたが都は知らなかった。後で行き方を調べないといけないと思った。岸谷はメールでそれらの情報は送ってくれると言う。
「岸谷さんって、オンサイト行ったことあるの?」
都は聞いた。
「あー…。一度だけ行ったことあるんですけどー、その時はルーターの設置とかじゃなくて、ルーターのモジュール?を外してくるだけのやつだったんですね。でも、何かラックの中のケーブルがぐちゃぐちゃすぎて、初めてでいきなりこんなのは無理ー!ってなってー、一緒に行った人にやってもらちゃったんで、結局何もしなかったです。」
構成変更やWAN回線の種別変更などで、以前は必要だったモジュールが不要になることがある。使わないのだから、コンフィグでモジュールのインターフェイスなどを閉塞しておけばあとは放置で良いのだが、稀に、不要なモジュールがルーターに残っているのを気にするお客もいる。特に、ルーター本体はまだEOLになっていないが、モジュールの方がEOLなった場合など、何かのバグの遠因となるのではと懸念を抱かれる場合がある。岸谷が行った件はそう言うものだったのだろう。
ラック内のケーブルが整理されていなかったり、整理されていたとしても、ケーブルダクトやケーブルガイドを使っておらず、ラックの背面からネットワーク機器の背面に手を伸ばすには、簾のようなケーブルを掻き分けないといけなくて、メンテナンスウィンドウなしで実施するのが難しい環境もあったりする。確かに慣れていない人間に、ケーブルを避ける加減をわかってやれと言うのは酷かもしれない。
「じゃあ、今回が初めて、って感じね。」
「はい、よろしくお願いします!」
岸谷は通る声に笑顔で、両手を前に揃えて軽く頭を下げた。
「とりあえず、もう明後日だから、持ち出しPCを確保しないと…。岸谷さんのカードってキーボックスって開けられる?」
持ち出しPCは鍵のかかったロッカーに入っていた。このロッカーの鍵はキーボックスの中に入っているのだが、そのキーボックスは一部の人のカードキーでしか開かない。都のカードキーでは開けられないが、岸谷は社員なので開けられるのではと思った。
「はい、開けられますよ。何番ですか。」
「えーと…。あそこだから、17番。」
都の席の島は、その鍵付きロッカーが並ぶ壁の近くなので、都は席を立って、持ち出しPCが入っているロッカー番号を探した。貼ってある番号シールは小さかったが、都には読めた。
「あ、じゃあ取って来ますね。」
「うん、お願い。」
都の依頼に岸谷は元気よく返事をして、人が両サイドに背中合わせで座っているため、椅子の背もたれが障害物のように飛び出している通り道を、小走りにすり抜けながら、キーボックスの方へ向かった。
都は一旦席に座って、しばらく放置しておいたため掛かってしまったスクリーンロックをカードキーで外すと、ようやくメーラーが起ち上がり切っていた。振り分けルールを使っているので、全てがメインの受信トレイにあるわけではないが、全部でだいたい80通前後の未読がある。1日休むとこれだ、とメールの多さに嫌気がさすが、都の場合、PMのメールにCCされているだけで実際には何のアクションもいらないメールや、提案や営業を含めた顧客全体の動きに関することで、都の方では特段動きもいらなければ、読まなくても良いメール、さらには都が構築SEをしているので含まれている、構築のメーリングリストがBCCされている、保守のアラートメール、メンテナンス通知メールなど、流してしまっても良いメールも多いので、まだ良い方だろう。案件を多く抱えているPMだとそうはいかない。色々なメーリングリストに入れられている人だと、1日で200通以上溜まってしまう。
「間宮さん、鍵取って来ました。」
岸谷が戻って来た。
「ありがとー。じゃあ、パソコン出しに行こう。」
都は席を立って、岸谷と一緒に、座席の島と島の間を抜けるため、椅子の背もたれの林の中を進む。岸谷は都の席に来るために、この林を抜けて来てくれたので、もう一度来た道を戻ることになる。よく考えたら、岸谷と一緒に鍵を取りに行けば、そんな手間をとらせなくて良かったのに。
「ごめんね、あたしも一緒に鍵取りに行けば良かったね。」
「え?」
岸谷は聞き取れなかったのか、歩きながら聞き返した。島と島の間を抜けて、広いスペースへ出でから、岸谷は都にもう一度聞き返した。
「何か言われました?間宮さん。」
「あ、大したことじゃないんだけど、ほら、岸谷さんにこの狭いところ行ったり来たりさせちゃったから。あたしも一緒に鍵取りに行けば、行ったり来たりしなくて良かったな、と思って。」
正確には岸谷は一往復半しているので、席に座っている人たちは、短時間の間に何回も自分の後ろを通られるのは邪魔だったろうに。それを新入社員である岸谷にさせてしまったのはまずかったなと都は思った。こう言う気遣いが出来ないところは、派遣社員故なのだろうか。正社員で、組織の一員としての意識と自覚を持って生きていれば、こういう気遣いは自然と出来るのだろうか。
「あ、なんだそんなこと。全然良いですよ。間宮さん、やさしいですね。」
岸谷は目を細めて微笑んでいた。良い笑顔だな、と少し見惚れてしまって、都は岸谷の言葉に何も返せなかった。
壁に沿って設えられたロッカー列の中で、持ち出しPCが入っている、17番ロッカーまで行き、岸谷は持って来た鍵で開けた。持ち出しPCは1段目の棚の上に、書類を入れるような厚紙の箱に収められている。同じ棚の上にはファイル閉じされた持ち出しPCの予約表があり、都はそれを取り出した。
「えーと、今日から月曜まで押さえておけば良いかな。」
都はそう言って、予約表で、今日から週明けの月曜まで矢印の線を引き、線の上に平仮名で「まみや」、と書いた。ファイルを棚に戻してから、持ち出しPCの入った箱を取り出した。
「閉めちゃって良いですか?」
「うん、ありがとう、閉めちゃって。」
岸谷は都に確認をとってから、開けたロッカーを閉めた。都は箱の中身を確認する。ノートパソコン本体、電源アダプターとケーブル、このパソコンもログイン管理されているので、ログイン認証用のUSBカードリーダー、あとはクリアファイルに入った、持ち出し申請用紙。マウスやコンソールケーブル、シリアルUSB変換ケーブルなども入っていたはずだが、なくなっていた。結構ボロだったし、特にコンソールケーブルを使うのに必要なシリアルUSB変換ケーブルなんかは調子が悪く、都は現場作業員をする時はいつも自前のものを持って行っていた。今後は誰でも自前で用意しろと言うことらしい。
「これ申請したことある?」
都は持ち出し申請用紙が入ったクリアファイルを取り出して、岸谷に見せながら聞いた。
「あ、ないです。」
岸谷が以前行った空振り現場作業員業務は、モジュールの取り外しだけだったので、持って行かなかったのかもしれないし、万が一のために持って行ったのだが、申請は一緒に行った人がやってくれたのかもしれない。
「あ、じゃあ後で教えるね。記入する前に、このパソコンのOSのアップデートと、セキュリティソフトのアップデート、あとー、セキュリティソフト使ってパソコンのスキャンとかやって、やりました、って書かないと行けないから、そっち先にやらないと。」
都はロッカーに背中を向けている座席の列に、明らかに今日は誰もその席で仕事をしていない席があった。
「モンちゃん、今日黒坂くんお休み?」
その不在の席の隣に座っている、外国籍の派遣社員に都は聞いた。オモンディと言う名前なのだが、モンちゃんと呼ばれている。穏やかな性格と、柔らかい物腰もあって、そんな呼び名で親しまれていた。このオフィスには外国籍の派遣社員は15人程度いて、特段珍しくもない。
「あ、はい、今日は休みですね。」
発音に若干外国語訛りがあるが、イントーネーションは正しい日本語で答えた。工事対応で休日出勤は誰にでもあるので、平日代休で不在になる人は珍しくない。
「じゃ、ちょっと机借りるね。」
「はい、どうぞ。」
オモンディに許可をもらって、都は今日不在の黒坂席で持ち出しPCを広げた。ACアダプターや電源ケーブルを持ち出しPCに接続し、黒坂席のディスプレイの裏にある電源タップから電源を取る。黒坂席の机上に設置してある黒坂の通常端末のイーサーネットポートから、通常の社内LANのケーブルを拝借し、持ち出しPCのイーサネットポートへ繋いで、PCを起動する。
「このパソコンすっごく重たいから、起動するの時間かかるんだよねー。」
持ち出しPCは古かった。サポートが終了した一世代前のOSでも少し重かったのだから、O S更改のタイミングでPCごと買い換えてくれれば良かったのだが、こう言うところに予算を割いてはもらえない。まして、現場作業員は基本外部ベンダーに委託する方針になっているのだから、持ち出しPCは恒常的に使用されるわけではない。故に、そこに予算を割く必要はないと言うことになる。実際、都が予約表に記載した際も、先々月に誰かが一回借りただけで、一月に一度出るか、出ないか、程度になっている。しかし、このオフィスから持ち出しPCを持って、現場作業員として出動する際は、それなりに重要なプロジェクトと言うことのはずなのだから、現場でも円滑に仕事ができるよう、持ち出しPCのスペックは上げておくべきなのに。
持ち出しPCが起ち上がるまで、岸谷とオモンディは雑談を始めた。岸谷がオモンディのことを「モンちゃんさん」、と呼ぶのが可笑しくて、都はまずそれで笑ってしまった。何か二人には共通の話題があるらしく、それについて話しているが、都には何のことかわからなかったので、愛想笑いだけ浮かべて聞き流していた。都はこんな風に岸谷と雑談に花を咲かすことの出来る自信が全くなかった。
二人が雑談に花を咲かせている間に持ち出しPCは起動し切った。都は立ったままだったので、前かがみに机に向かって、持ち出しPCのタッチパッドを操作し始めた。
「あ、起ち上がりました?」
都の動きで岸谷は気がついて、都に声をかけた。
「うん。それで、持ち出す前にやっておかなきゃいけないことはー。」
都は岸谷に、OSの手動アップデートの仕方や、セキュリティソフトのアップデート方法、セキュリティソフトでPC全体をスキャンする方法を説明した。実際にこれらを始めると時間がかかるので、パソコンはこの机においておいて、席の近い都がちょいちょい様子を見ながら全部終わらせておくことにした。
「あ、間宮さん、ドライバーとかの工具って、必要ですよね…。どうします?誰かに借りないといけないですよね…。」
岸谷が聞いてきた。
「だいじょーぶ。あたし一通り持ってるから。」
「え、そーなんですか?すごーい!」
素直に驚く岸谷に都は笑ってしまった。ちょっと前まではこのオフィスのエンジニアであれば工具一式は持っていたものだが、昨今は現場作業員をする機会もほとんどないので、オフィスでは持っていない人の方が多い。都も現場作業員として外出する機会もほとんとなくなったが、一応、袖机の中に入れておいてある。
「あと、他にも何か持って行った方が良いものってあります?」
「そうだねー、あとはー…。あたしの袖机開けて考えよう。」
都のその言葉に岸谷は笑って、都と一緒に都の席まで戻った。都は立ったまま、自分の袖机の、一番下の大きめの引き出しを開けた。ケーブル類や工具類、それに小さめのルーターであればしまって持ち運びできるこの会社のロゴの入った丈夫な紙袋などが入っている。
「えーと、まずドライバーでしょ、プラスだけあればいんだけど、一応これも持って行こう。」
大きめのグリップで使いやすいプラスのドライバーと、グリップのサイズは小さいが、サイズや形の違う複数のアタッチメントを選べるドライバーセットを出した。
「あとー、もちろんコンソールケーブルと変換ケーブル、それとスペアのストレートケーブルとクロスケーブル…。」
コンソールケーブルとシリアルUSB変換ケーブルの他に、3メートル長のイーサーネットストレートケーブルとクロスケーブルを2本づつ出した。稀にだが、客宅ルーターにWAN用として発送時に同梱しているイーサーネットケーブルが不良品で、交換の必要が出てきた時に役立つ。
通常、回線終端装置のイーサーネットポートのピンアサインはMDIXで、ルーターのインターフェイスポートのピンアサインはMDIだ。ポートのピンアサインが異なる場合は、ストレートケーブルで接続し、同じ場合はクロスケーブルで接続しなければならない。日本拠点で客宅ルーターを発送する場合、WANケーブルとして同梱するのはストレートケーブル1本のみだ。しかし、回線終端装置のポートのピンアサインは、実のところ回線オーダー時に選択肢としてどちらも選べる。客宅設置機器がスイッチの場合があるが、スイッチのポートのピンアサインはMDIXなので、もしストレートケーブルで接続するのであれば、回線終端装置のイーサーネットポートのピンアサインはMDIとしなければならない。都たちの部署では日本国内の回線自体のオーダーの中身は全く見えないので、稀に起こるオーダー時の選択ミスに備えて、ケーブルはストレート、クロスどちらも持って行った方が良かった。
また、LAN側の接続ケーブルはお客の責任区分範囲なのだが、これもごく稀に、LAN側機器の接続ポートと客宅ルーターのLANポートとを正しく接続するケーブルが準備されていなかったりするので、その場合の対応もできる。
「あとー、電源プラグを2芯にするアダプターでしょー。」
客宅ルーターの電源プラグは3芯だ。そのためお客の電源アウトレットも3芯対応のものでなければいけないが、時折普通の家庭用の電源タップが、サーバールームも兼ねる物置などに置かれていて、そこから電源を取るようお客に指示される時もある。そう言った時にこれがあれば対応できる。もちろんこれを使った場合、そのままお客にあげてしまうしかないが、お客で2芯アダプターを用意できず再工事になったり、3芯なんて聞いていないと怒り出されるのを避けるためには仕方ない。
「それとー、念のためスイッチングハブでしょ。」
都は手のひらに収まるくらいの小さく、薄い4ポートもののスイッチングハブとその電源アダプターを出した。今回の現場作業員をする拠点のLANの構成がわかっていないので、これは不要かもしれない。メインバックアップ構成で、両ルーターのLANインターフェイスが同じセグメントに属し、お客のL2スイッチに接続するような場合、デフォルトゲートウェイ冗長プロトコルや、LAN側のダイナミックルーティングが動作しないトラブルに当たった時、切り分けのために使える。もし、お客のL2スイッチに接続した場合はうまく動かないが、都のこのスイッチングハブに繋いだ時はうまく動く、となるとお客スイッチの設定がどこかおかしいか不具合を抱えている、と判断できる。
「それとー、ラックのネジ!」
最後に都は小袋に入った、ラック側のネジとケージナットのセットを出した。客宅ルーターをラックにマウントする際、ラックに固定するためのラック側のネジやケージナットはお客の責任区分範囲で、お客が用意する必要がある。しかし、これについても時折聞いていないとか、客宅ルーター設置時の担当者がどこにあるか分からない、あるいは単純に用意するのを失念した、と言うことがあるので、ラックがEIAの19インチラック規格に沿ったものであれば対応できるように準備しておく。これも使った際はお客にあげてしまう形になってしまうが、お客が用意できるまで何時間も待機したり、その日はマウント出来ずに時間切れで再工事になって、ルーターの保管場所もないので持って帰ってくれ、と言われた時が大変だ。小さいルーターなら良いが、2U、3Uのものを持ち帰ってくれ、と言われると本当に困難だ。物品の出し入れに厳しいデーターセンターなんかだとさらに面倒になる。
「すごーい!なんでも出てきますね、間宮さんの袖机!」
岸谷は変なところに感動していた。あとは当日の担当者の連絡先とか、客宅までの地図とかあれば良いが、今はスマートフォンの地図アプリに案内させてしまった方が正確なことも多い。
「あ、あとさっき高松課長が当日流し込むスクリプトある、って言ってけど、それってもうもらってる?」
それは持ち出しPCへダウンロードしておく必要があった。
「あ、はい。それはコンフィグ集積サーバーにアップロードしてあるから、そこからダウンロードしておいてください、って言われてます。」
岸谷によれば、今回の工事対象客宅ルーターの管理番号である、CE番号ももらっていると言う。持ち出しPCを社内LANに繋いであれば、客宅ルーターのコンフィグ集積サーバーにはアクセスできるので、対象のCE番号を検索し、当該フォルダのコンフィグタブにスクリプトがアップロードしてあって、そこから落とせば良いようだ。CE番号は岸谷からメールで都がもらって、持ち出しPCのスキャンなどが終わったら、都がダウンロードしておくと、岸谷と話した。
万が一現場でスクリプトがなくとも、専用線に接続する方の客宅ルーターであれば、WANインターフェイスにアサインするIPを電話で聞いて、手投入でコンフィグし、WAN側にデフォルトルートを切って、オフィスで待機している担当SEがリモートでアクセスできるようにしてやれば良い。あとはリモートで全部コンフィグ出来る。
インターネットに接続する方のバックアップルーターは、暗号化のパラメーターで共通のものは、だいたい都は覚えてしまっているので、それらはそらでコンフィグ出来るので問題ない。しかし、個別に異なる事前共有キーは長く、意味を持たない文字数時列なので、これを電話で聞いて正確に打つのはちょっと苦労しそうだ。もちろん、IPSecを上げるところまで行かなくとも、インターネットへの接続だけ確立してやれば良いのだが、おそらくは客宅ルーターでPPPoEをインターネット・サービスプロバイダエッジと張る必要があるはずで、PPPoE認証のためのユーザーネーム、パスワードも、電話で聞いて正しく設定するのは難しい。LANインターフェイス同士を、スペアで持って行っているクロスケーブルで繋いで、仮IPで疎通できるようにしてしまい、オフィスにいる担当SEがその接続を使って、メインルーターからバックアップルーターにログインし、リモートでコンフィグしてしまえば良いので、この手段が取れれば、これが一番楽だ。