04-06

2022-02-06

 旧客宅ルーターでインターフェイスの説明文一覧を表示させ、LANインターフェイスが管理者権限で閉塞されていることを確認する。LANで回っていたダイナミックルーティングのピアを表示するコマンドで、ピアが存在しないことを確認する。プロバイダエッジルーターへ広告されているルートを表示するコマンドを叩き、何も広告されていないことを確認する。最後にメモリ内に保存されているコンフィグと現在ルーター上で読み込まれているコンフィグに差分がないことを確認してから、マウスで新規客宅ルーターのターミナルウィンドウをクリックする。客宅ルータへのログインセッションは5分で切れるように設定してあるので新規客宅ルーターからログアウトしてしまっていて、ログイン元のサーバーのコマンドプロンプトがターミナルウィンドウに表示されていた。再度新規客宅ルーターにログインし、インターフェイスの抜き差しなどのログがターミナルウィンドウに表示される設定をする。数回エンターキーを叩いてホスト名だけの表示の行を作り、現在時刻を表示させてからコンフィグモードに入った。
 「じゃあ、先にBGPのアウトのフィルター外しちゃいます。」
 あとはLANインターフェイスを解放すれば良いだけと言うところまで新規客宅ルーターのコンフィグはしてあった。旧客宅ルーターと同様、LANインターフェイスが開放され、接続されなければプロバイダエッジルーターには何も広告されないような設計になっているが、念のため事前に広告を全て止めるフィルタを入れてあった。これをまず最初に外さないといけない。そうしないとLANインターフェイスを解放し、LANケーブルが接続され、LAN側機器と疎通も取れて、LAN側機器とダイナミックルーティングでルート交換が可能になっても、WANに何のルート広告も出来ない。もしそうなると現地お客と他拠点との通信は全く成り立たなくなってしまう。
 フィルタを外してから一度プロバイダエッジルーターとのダイナミックルーティングをソフトリセットし、プロバイダエッジルーターへの広告ルートを確認する。もちろん何も広告されていない。つまりこの念のためのフィルタは不要だったと言うことなのだが、工事はだろう、ではなく、かもしれないでやるものだ。
 「じゃあ、LANを開けまーす。」
 「お願いしまーす。」
 都がいよいよ感を出して言うので、岩砂も調子を合わせた。都は再度時刻表示のコマンドを叩いてからインターフェイスの説明文が一覧で表示されるコマンドを叩き、管理者権限で閉塞されているLANインターフェイスを確認する。そしてLANインターフェイスをコンフィグするモードへ入り、インターフェイスを開放する。LANインターフェイスが管理者権限で開放されたことを示すログが表示された。コンフィグモードを抜けてインターフェイスにアサインされたIPアドレス一覧を表示するコマンドを叩く。LANインターフェイスは開放されているが、まだ上がっておらず何も接続されていないことを示していた。そのまま1分くらい待ってみたが何も起きない。
 「…繋いでくれませんね。」
 「だねえ。」
 都たちとしては作業間違いはないので特に焦りはないが、それでも何か現地お客側であったのかもと緊張する。
 「ケーブリング変えてるのかもしれないね。」
 岩砂が言った。LAN切り替え時にお客が客宅ルーターやお客のLAN機器の配線を直すことはある。プロバイダ側の工事に伴う切り替えは、当然お客の通信は一時的に断になる。そのため断になって良い時間をお客内で調整、周知してもらわないといけない。これをメンテナンスウィンドウとかダウンタイムとか言うが、どちらにしろお客通信は断になっているのだから、現地のお客がついでに配線も少し綺麗にしようと思ったとしても不思議ではない。通常通信機器はラックに収められている事が多いが、ラック内の配線が綺麗になっている事はあまり多くはない。お客の機器を増やしたり交換したりで、どんどん雑になっていくことは良くあることだ。そうなることを避けるために、何か作業があるたびに配線状態をチェックし、メンテナンスし易い状態になっているか確認するお客もいる。今回の現地お客は拠点のIT担当者だ。配線に気になるところを見つけてLANケーブルの差し替えついでに直しているのかもしれない。
 「お、上がった。」
 「上がりましたねー。」
 新規客宅ルーターのターミナルウィンドウにLANインターフェイスが上がったことを示すログが吐き出された。岩砂が先に反応した。都はログの間隔を空けるためリターンキーを数回叩いた。するとLANで回すことになっているダイナミックルーティングのピアが張れたことを示すログも吐き出された。都はまずLANインターフィスの状態を確認するコマンドを叩いた。イーサーネットインターフェイスでは、速度と複信方式とが対向の機器と合っていないといけない。速度と複信方式の設定を固定にするか自動にするかはインターフェイス毎に設定する必要がある。既存客宅ルーターが自動の設定だったし、事前のヒアリングで自動でと客から回答ももらっていたので新規客宅ルーターのLANインターフェイスも自動設定にしてある。対抗機器と双方で自動設定になっている場合、お互いに可能な速度と複信方式について情報交換し、一番良好な一致でイーサネット通信を確立する。
 都が出力を確認すると複信方式は全二重、速度は1ギガとなっていた。それは対向機器の接続ポートが1ギガ以上のインターフェイスで自動設定になっていることを意味している。もし複信方式が半二重となっていた場合、対向側は固定設定になっていて複信方式について情報交換が成立しなかったことを意味する。この場合実通信に不具合が出てしまう。
 ケーブルを挿した時に上がるエラーが一つ出ている。このエラーが本当にケーブル接続時のエラーなのかそれともケーブル不良によるものなのか判断はつきづらい。一旦エラーカウンターをクリアし、対向の機器のIPに1万回のpingを打ってみる。再度エラーカウンターを確認するとエラーはなかった。先程のエラーは単なるケーブル接続によるものと判断して良い。既にLANインターフィスの出と入りで結構な量のパケットが流れていて、もうお客さん通信が始まっていることを示唆していた。