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朝はいつもタイーマーでつくようにしているテレビのニュース番組で目が覚める。そこから本当に起き上がるのには少し時間がかかる。単に仕事に行きたくないというだけではなくて、肌に直接触れる毛布やシーツの感触の気持ち良さから離れたくないのだ。かと言ってこの快感に耽溺していると朝の用意の時間に余裕がなくなるので仕方なく起きる。顔を洗ったり、朝食の用意をしたり、出来るだけ何も着ないでいると、時間に追われているにもかかわらず自由は自分の手元にあるような感覚があり、余裕があるようにすら感じる。
コーヒーを飲みきり、歯磨きをしてトイレを済ませてから下着をつけ始め、カウンターキッチンについている簡単なテーブルに、脚付きの化粧用ミラーを立てて軽く化粧をし、パンツを履いてカットソーを被る。だんだんと自由が奪われて行くと感じると同時にさあ仕事だと偉そうに構える自分もいる。ジャケットの袖に腕を通して時間を確認すると、まだ7、8分余裕がある。今日からバッグを変えようと思ったのを思い出して、きちんと中身を移し替えているか確認する。特にオフィスのセキュリティカードを移し忘れていると取りに帰ってこないといけない。変えたバッグが服にあっているかどうか確認したくてバッグを提げたまま、玄関の全身鏡を見る。大丈夫そうだ。全身鏡で前髪が気になったのでちょっと直す。そんなことをしているとあっという間に部屋を出ないといけいない時間になってしまい、慌てながら戸締り火の元を確認する。スノコの上に敷いたベッドマットレスの上で寝転がるぬいぐるみたちに行ってきますを言ってから、ヒールのないパンプスに足を通して玄関を出た。